ラベリング理論


本記事は、ラベリングが、人間関係、教育、ストレス対処等に与える影響について述べています。逆に、思い込みや適切でないラベリングが固定化してしまうことで、ラベリングが与える悪い影響についても述べています。

ラベリング理論とは

ラベリング理論とは、1960年代にハワード・ベッカーらによって提唱された、逸脱行動に関する理論です。

社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのラベルを貼ることによって、逸脱を生みだすのである。

 

ハワードは、逸脱というのは行為者の内的な属性ではなく、周囲からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出されるものだ、と捉えました。

ラベリングとは

事務の仕事などで書類を仕分ける時に、「保険関係」「行政手続」などといった名前のついたラベルを貼って書類を分類することをラベリングと言います。

wikipediaによると下記のように説明してあります。

特殊な事実をもとにしてある人物やある物事の評価を類型的かつ固定的に定めること。

また、社会学者のハワードは、髪を染めている人は不良だ、という”勝手にラベリングをする人”が居て、双方の立場から逸脱を説明しようとする時に、ラベリングという言葉を使いました。

ここでは、ラベリングを、人や事柄を評価してそれに名前をつけること、と定義します。

ラベリングの与える影響

様々な例から、ラベリングの与える影響について考えてみます。

1.書類の分類がしやすくなる

書類整理をする時に、もしラベリングをしなかったら、とても不便ですね。調味料も、塩や砂糖といったラベリングがなかったら、とてもわかりづらくなります。

2.ラベリングが人間関係に与える影響

中学校で、はじめて万引きを働いた児童が、家族や友達から非行児童とラベリングをされ、児童がよりエスカレートして非行を働いてしまう、といった例が犯罪心理でよくとりあげられます。

私は、この場合はラベリングされたからエスカレートした、と捉えてしまう(ラベリングしてしまう)ことがより重大な問題のようにも思えます。ラベリングが与える影響は個人によって異なるし、児童と関わる人の影響のほうがもっと大きいのではないでしょうか。

関連 👉スティグマ 👉レッテル貼り

3.ラベリングが教育に与える影響

ラベリングに関連する、2つの有名な実験から教育に与える影響を考えてみます。

スタンフォード監獄実験

看守役と囚人役に学生をわけて、2週間演じてもらう。結果、時間が経つにつれて、看守は看守らしく、囚人は囚人らしく振る舞う結果になったというもの。

ふつうの人が悪魔に変わるというこの実験結果から、教育に与える影響は2点考えられます。

ひとつは、立場によるラベリングが人の行動に与える影響があるということです。人に立場によるラベリングを行うときは、注意深く行う必要があります。もう一つは、看守役のような役を任されることがあっても、ラベリングから自分や人が受ける影響を自覚し、自分らしく振る舞うことを手放さないことだと思います。

ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは、教育心理学の用語で、教師が期待することで学習者の成績が向上することです。別名、教師期待効果とも。無作為に選ばれた生徒を成績が伸びる有望な生徒と教師に伝えることで、その生徒たちの成績が実際に向上したというもの。

しかし、近年の研究では、ピグマリオン効果と心理の因果関係はないとされています。この実験結果と批判から、教育に与える影響をふたつ考えられます。

ひとつは、有望な生徒という無作為なラベリングをすることで、生徒の成績が向上するとは限らないということです。そのため、教師は生徒をラベリングせずにあるがまま扱うほうがいいし、生徒との関わりの中で生徒にあったラベルを一緒に探し、成績だけに関わらず生徒の成長を願う教師であってほしいと思います。無作為に渡されたリストで、教育結果に差がでる教師にならないほうがいいでしょう。

もうひとつは、実験結果が科学的な裏付けが無いからと言って、教師が生徒の成長を期待しないでいいということにはならないということです。生徒の成長に関して期待しないということは、それは教師の責任を放棄することだからです。

関連 👉ピグマリオン効果 👉スタンフォード監獄実験 👉ゴーレム効果 👉ミルグラム実験

4.ラベリングがストレス対処に与える影響

ラベリングがストレスに影響をあたえるような事例について考えてみます。

健康診断結果

高血圧のスクリーニング検査により、高血圧患者に自分は病気であるという「ラベリング」が生じ、その結果、欠勤が増えたことをカナダの実験結果が報告しています。

スクリーニング検査とは、疾病が疑われる人を選出する検査で、簡便で迅速なことが特徴です。この場合、高血圧が疑われる人を選ぶための検査で、実際に高血圧患者かどうかは詳細な検査をしないとわかりません。それにも関わらず、スクリーニング検査で高血圧が疑われると選出された時点で、対象者の欠勤が増えるというものでした。

ここから学べることは、医師でさえも、そして検査と介入に医学的根拠があったとしても、健康な人もそうでない人でもスクリーニングというラベリングによる健康被害が起こり得るということです。さらに、スクリーニング検査については、患者とのコミュニケーション次第では、ラベリングによる影響は強くも弱くもなるとも考えられます。

たとえ、事実に基づかなくても、健康にも不健康にもラベリングすることができ、どちらにも影響を受ける人が居るということです。「1日に卵を2個食べたら、コレステーロールが上がって体にわるいよ」といった、無責任な健康に関する意見は、その人にとって不利益なラベリングを生じかねないということです。

参考

高血圧患者のスクリーニング検査とラベリングの後で、仕事の欠勤が増える

👉Increased absenteeism from work after detection and labeling of hypertensive patients. Haynes RB 

1日のコレステロールの摂取基準が科学的根拠がないとして撤廃

👉日本人の食事摂取基準2015年版 厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html

心の動きに名前をつけて気持ちを落ち着ける

心臓が高鳴って心拍があがって胸が痛い。そんな時、「祖母から遺伝した心臓の病気」とラベリングしたらどうでしょうか。本人は病気に怯えて苦しむかもしれません。

胸が痛いのが、大好きな同じクラスの男の子が親友の女の子と一緒に居る時に限ってだったとしたら、「片思い」や「恋煩い」といったラベリングをしたらどうでしょうか。胸が痛いことも含めて、より人生を深いものにする経験とすることが出来るかもしれません。

極端な例でしたが、自分の気持ちはいつでもラベリングしなおすことができます。悲観的に捉えすぎていた事柄を、より楽観的にラベリングすることで、建設的に捉えることができるようになることがあります。逆に、楽観的に捉えすぎていることは、より悲観的に捉えるほうが現実的にいいことがあることもあるでしょう。

自分の気持ちを普段は楽観的に、そしてたまには悲観的にラベリングしなおしてみてはいかがでしょうか。

関連

👉リフレーミング 👉メタ認知

ラベリングは用法・容量に注意して使いましょう

ラベリングは適切に行う必要があります。人にも自分にも不適切なラベリングをしない。ラベリングをせずに接することもできます。また、不適切なラベルははがすこともできるし、違うラベルを貼り直すこともできます。どんなラベルを貼るかは、あなた次第です。

自分には、ありたい自分をあらわすような、ラベルを貼ってみましょう。気分で付け替えてあそんでもいいと思います。人には、その人が望んでいる姿をあらわすようなラベルを貼ってあげましょう。

ただ、ラベリングをする際は、少しだけ注意深く、その人の幸せを願ってラベルを貼ってあげてみてください。価値ある目標に取り組む時に、ラベリングは大きな助けとなります。自分らしさを大切に、そして誰かのためにという気持ちを忘れずに、勇敢にラベリングに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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